手作りの小刀を操り、スルスルとネックを削りネックシェイプの調整をするクラフトマン。
ヤイリギターでは、丸みのあるタイプ、三角形に近いタイプ、かまぼこ形と大きく3種類のネック製造している。
どれも型があるわけでなく、担当クラフトマンの感性を頼りに削り、形を整える。
形の好みは人それぞれだが、握った感覚は弾きやすさに大きく影響するためプロミュージシャンはこのネックの仕上がりにこだわる。
時には工房に出向き、自ら握り具合を確認する客もいるという。
クラフトマンの使う小刀からカンナなど道具はすべて手作り。
きれいに研がれ、キラリと輝く道具の数々に職人のこだわりを見た。
写真の小池氏は数多くのアーティストのためにギターを作り続け、ヤイリギターのカスタムクラフトの基礎を築いた一人。
ギター製造工程のすべてを知り、一人で一つのギターを生み出すオールラウンドな職人だ。
そんな小池氏の技の一つが、ブレイシングとスキャロップによるトーンコントロール。
ブレイシング(ヤイリでは「力木」と呼ぶ)はギターの内部構造で、トップ材の補強を目的とするものだが、音響にも大きな影響を持つ。
力木を軽量化し、音質を調整するためにブレイシングの端を削る作業がスキャロップ。
小池氏は、力木の強度を保ちながら、削る位置などを工夫することで音色を変えいくのだ。
顧客の望む音色を想定しながら、迷いなく力木を削る。
マニュアルがあるわけでなく、実績と経験が頼りの匠の技。
多くのプロミュージシャンが氏の生み出すギターを求めるというのも納得だ。
美しい曲線を描くサイド材。
うず高く積まれた曲げ木はまるでアート作品のよう。
ヤイリ特製のペンディングマシーンを使用し、サイド材の曲げ加工を行う。
曲げ加工した2つのサイド材とカーフリングを専用の型にセットしクランプを掛けて膠(にかわ)で強力に接合し、ギターの形ができあがる。
中堅以上のヤイリギターの職人の中には、前職は家具の職人だったという人が多い。
その時に身につけた、木工の技術がギターの製造に活かされているのだ。
木材の性質知り、木材の加工技術を熟知したクラフトマン。
曲げ木の工程も、そんな彼らによって支えられている。
音楽が好きで、ギターが好き。
数多くのメーカーなかでも、ハンドクラフトにこだわるヤイリギターをリスペクト。
ヤイリギターには全国から熱い想いを胸に秘め、ギター職人を志し若者が集まってくる。
後継者不足といわれる製造業だが、ヤイリギターにギターにはその心配がない。
ベテラン、中堅の職人にまじり、若いクラフトマンが多く働いている。
写真の彼もその一人。担当しているのはフレット打ちだ。
時には先輩たちの指導を受けながら、黙々と作業を続ける。
憧れの先輩職人のように、いつかは一人で一本のギターを作りたい!
若者は、 オールラウンドの職人を目指し日々、腕を磨く。
一代でヤイリギターを世界のブランドに築きあげた 代表取締役 矢入一男氏。
「こんなこと、たわけじゃないとできんわ」と名古屋弁で自嘲する矢入氏だが、氏の常識を超えた行動が、現在のヤイリギターを作り上げた。
1960年、30歳にして渡米し本場のギター作りを学び、1965年「K.YAIRI」のブランドを立ち上げる。
当初から大量生産のギターでなくクラフトマンが作るプレミアムなギター制作に取り組み、販路も日本に限らず、世界に目を向け営業を展開。
1970年代から材木の備蓄を進め、20年はギターが作れるだけのストックを確保し、現在も買い続けている。
矢入氏の、時代の先を読む力と行動力が世界中のミュージシャンが愛してやまない「ヤイリギター」を支えている。
取材協力 / 株式会社ヤイリギター TEL:0574-62-1138